ミャンマーよもやま情報局

関西福祉大学 勝田吉彰研究室。科研費研究でミャンマーに通っています。学会発表や論文には入らないやわらかいネタをこちらで発信しています。取材や照会など連絡先はこちらへ myanmar@zaz.att.ne.jp

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アウンサンスーチー氏とミャンマー軍の距離感を嗅ぎ取れる画像

アウンサンスーチー氏とミャンマー軍の距離。ちょっと面白い考察の出来そうな写真がフェイスブックから流れてきました。アウンサンスーチー氏と話しているネクタイの紳士は、軍医大学(DSMA)の精神科教授です。私とは民主化翌年2012年来のつきあい、福岡でアジア精神医学会開催の際はシンポジストとして来日、私がアレンジ任されたシンポジウムに協力してくれました(当サイトにも再々登場してる顔ですね)。

彼はマンダレー大卒、現在はDSMAでUM1(ヤンゴン大医学部)教授とともにこの国のメンタルヘルスを引っ張っています。話している内容は、彼のフェイスブックによれば、PTSD、精神障碍者への偏見問題、精神療法、権利擁護・・・

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と、予備知識を共有したところで、この写真をじーっと見てみましょう。透けて見えてくることは・・・

1.アウンサンスーチー氏は軍の人材に相当なる信頼感を抱いている
この国のメンタルヘルスについて、アウンサンスーチー氏が話を聞く相手に、まず軍医系の教授を選んだことに私も少なからず驚きました。まずはUM1(ヤンゴン医大Ⅰ)教授だろうと思っていました。UM1の教授もやはり、私のシンポジウムに来日してくれ、同じくフェイスブック友達です。彼がアウンサンスーチー氏と会談したなら必ずアップされ「いいね」の嵐になっているはず。でもそうなってはいない。

先日のミンアウンフライン将軍とのニコニコ握手やタンシュエ会談以来、表面的には軍と和解したような事になっていますが、もうちょっと深いレベルで軍に抱く感情の変化が読み取れます。実際、この軍医大学(DSMA)に入学するには1週間にもわたる(日本の防衛医大入試の倍ぐらいの手間がかかった)厳しい選考で筆記はもとより体力・心理・リーダーシップと多方面から調べ上げられよりすぐりの人材しか入れません。そういう処に目を付け、黒リボン運動で気勢あげていた人々の頭越しに軍医系にコンタクト(”擦り寄る”という表現はあえて控えますが)というのは、彼女は言われてる以上にリアリストです。

2.ミャンマーメンタルヘルス問題についてしっかりインプットされた

ミャンマーが取り組まねばならないメンタルヘルス問題は山積しています。
ゴールデントライアングル発麻薬問題から薬物依存症、アルコール依存症、民族紛争から後遺症としてのPTSD。そして精神科医数が200人しかいない人的資源不足。総合精神科病院がヤンゴンマンダレーに1か所づつしかない絶対的不足問題。これらがしっかりブリーフィングされました。

発展途上国の指導者にとって、メンタルヘルス問題はしばしば目に入りにくい問題です。たとえば私が外務省時代に在勤や出張していたスーダンでもコンゴでもセネガルでも、まずは感染症と公衆衛生。乳幼児死亡率を減らし、マラリア対策を推し進め、井戸堀りきれいな水を供給する。あるいは救急医療を整備する。こうした諸々の後に、メンタルヘルスの優先順位が来ることが多くの途上国共通の現実。こうした中でアウンサンスーチー氏がどれだけメンタルヘルスにプライオリティを置いてくれるのか、期待しながら見てゆきたいと思います。

 

 

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