ミャンマーよもやま情報局

関西福祉大学 勝田吉彰研究室。科研費研究でミャンマーに通っています。学会発表や論文には入らないやわらかいネタをこちらで発信しています。取材や照会など連絡先はこちらへ myanmar@zaz.att.ne.jp

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全然ハイテク化されてないミャンマーの鉄道がそこそこ正確に走るワケ

ヤンゴン環状線に乗られたことのある方は、「案外思ったより時刻表どおり来るなあ」と感想をもたれた方も多いと思います。あの博物館モノの線路と中古車でナゼ?と。乗務員室で見えてくるそのワケを紹介。

インドやアフリカの途上国で鉄道に乗ったらカオスな経験ができた・・という旅行記なら、そこら中に転がっています。もちろんミャンマー国鉄だって、雨季で線路が冠水しただとか橋が流されただとか、カオスになる時はなります。しかしヤンゴン環状線の列車はそこそこ時間どおりにやって来る。切符売り場のおっちゃんが「次は15時発」と言ったら、(いくばくかの途上国のように18時に来たりはせず)だいたい15時~15時20分ぐらいのあいだのどこかに列車は顔を見せます。切符売り場のタブレット端末を例外として、ハイテクとはおよそ無縁なこの鉄道をどうやってそこそこ時間どおり走らせられるのか。

この写真にヒントがあります。

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乗務員室に招待され、助士席に座って環状線一周したときの光景です。運転関係の乗務員は運転士1名と助士2名の3名乗務(その他、車掌と警官が後ろに乗っている)。写真に写っているのは助士の持ち物です。バインダーに挟んだ紙が秘訣。

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この紙には、この列車が各駅に何時何分に到着して何時何分に発車したか、全部ボールペンで記録することになっています。この紙は、この列車1回限りです。

つまり、全列車の全駅について、発車合図を出しては何時何分に発車して・・・と克明に記録して乗務ごとに提出、フィードバックされているのです。

助士の仕事は発車前後の安全確認に運転時刻管理。これに集中しているから、(さすがに日本並みとは言わないけれど)英米国程度の正確さが保たれている。

逆にハンドルを握っている運転士の前には時刻表が見当たりません。たとえば日本の鉄道ならJR私鉄とわず、必ずこのような運転時刻表が運転士の目の前に鎮座しています。(ミャンマー国鉄の時刻は分単位で規定されますが、日本の鉄道はより精緻に15秒単位で規定されます。たとえばこの写真で神辺駅発車は14時36分15秒)

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今回の写真はJR東海の中古車キハ40ですから、この運転時刻表を差し込む器具は当然設置されていますが、使用されず、助士が時刻管理に専念しています。

いまヤンゴン環状線にはJICAプロジェクトで日本の鉄道技術者がどっと入り込んでいます。彼らの頭の中には、このヤンゴン線をCTC化して信号含め自動制御・・ということが入っているだろうと容易に想像されますが、このミャンマーで、そこそこうまくいっている部分までそうやって合理化し助士たちの職がなくなってしまうのが正解なのだろうかと一抹の疑問も禁じ得ないのです。

もちろん、「これは日本と中国の競争なのだ。ここでやらなきゃ運用一切がっさい中国式になってしまうぞ」という意見には仰る通りとしか言えないわけですが。

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 こちら運転士側には時刻表はなく、列車を動かす作業に専念。

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