ミャンマーよもやま情報局

関西福祉大学 勝田吉彰研究室。科研費研究でミャンマーに通っています。学会発表や論文には入らないやわらかいネタをこちらで発信しています。取材や照会など連絡先はこちらへ myanmar@zaz.att.ne.jp

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ミャンマー当局が象さんの密猟は許さんゾウ・・と張り切るなかで、ブッシュミート問題も透けてきた

象さんの密猟者捕物帳。ミャンマー警察が寝込みを襲って2人逮捕、3人取り逃がしという顛末。下手人たちは夜中に象の肉を保存作業していたとのこと、象牙だけじゃなくてブッシュミート問題も透けてきました。

アフリカの密林では密猟者とレンジャーとの戦いは熾烈を極めます。密猟者たちは象牙をちょん切って、さらに中国人ワルの手を経て高級印鑑に化けるという寸法ですが、ミャンマーでも同じことが展開しているとイラワジ紙報道。

イラワジ地方Bhamo Creekで警察が密猟者を急襲、銃撃戦のすえ2人逮捕し3人取り逃がし。いずれも象の肉を加熱し保存作業をおこなってから銃を置いて寝込んだところを急襲するも気が付かれて全員逮捕には至らなかった模様。

 その時、像の肉を加熱して保存作業をしていたと記事にはあります。つまり、密猟者たちが殺した像はただ単に象牙を取って中国人のワルに売り渡すだけじゃなくて、(この写真だけじゃ伝わってきませんが実際のところ)像の肉を食べる。食像行為にも走っているわけです。そして像肉の流通ルートもあるとか。

 

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こうした、森の中で仕留めた動物の肉を食らうことを「ブッシュミート」といいます。[bush meat]でgoogle検索、画像を出したら実に色々出てきます。
さしあたりこんなあたりでしょうか。

bush meat - Google 検索

これは2014年のエボラ騒動のとき大問題になりました。コウモリがもっていたエボラウイルスがヒトの世界に入ってきたとき、流行国(ギニア・リベリアシエラレオネ)の人々がコウモリを撃ち落として食べたり(実際に上記検索では、自分で撃ち落としたコウモリを喜色満面で広げて見せるJKの画像が出てきたりする)、サルを食べたりする伝統的食行動が大きな役割を果たしました。現地政府はブッシュミート禁止令を出しましたが、エボラ流行が終息し1年もたてば元の木阿弥。ただ単に禁止をかけてもうまくゆかない。それは貧しい森の住民にとって、ブッシュミートは現金を要しない貴重なタンパク源になっていて、それを取り上げれば(ただ禁止すれば)彼らの栄養状態に悪影響を及ぼすからです。効果的にやめていただくには、村落開発で養鶏や養豚などの技術支援をおこなってブッシュミートに代わる蛋白源を得るスキルを伝えることが必要。(実際、アフリカで活動する青年海外協力隊で、村落開発は人気職種)

私にとって、このブッシュミート問題はひとえにアフリカで出会う問題でした。上記に加え、コンゴ民主共和国への定期出張では、キンシャサの路上で自分が仕留めたサルを道行く車に突き出して「美味なサル、買わんかえ~」とやってる住民を毎回目にしては考え込んでいたものです。

今回イラワジ紙の記事で、このブッシュミート問題がアフリカのみに存在するのではなくミャンマーでも密猟した像の肉が重宝されてしまうということが分かったのは、重たい現実でした。ヤンゴン・ネピトーから始まる経済発展が、将来、村人たちに波及して像の肉に手を出す人がなくなることを願っています。

 

 

Dateline Irrawaddy: ‘We Have to Reform the Entire Administrative System’