昨日2月2日、WHOがジカ熱の流行をめぐり緊急事態宣言「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態(PHEIC: Public Health Emergency of International Concern)」を宣言しました。今回はこれが具体的にミャンマー生活にどうかかわるか解説します。
まず何より
蚊に刺されないこと
これです。蚊にさされなければよほど例外的なことがなければ注)まず感染することはありません。
注)ジカ熱感染後に精子中にウイルスが残るというデータもあり、理論的には性交感染の可能性もあります。こちらは”行動次第”で防げるわけですので、蚊による感染を前提に話をすすめます。
WHOが全世界に向けて宣言を出したということ、目の前のミャンマーの現実と照らし合わせて不安を感じておられる方も多いと思います。この舌を噛みそうな名前の宣言、
「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態(PHEIC: Public Health Emergency of International Concern)」
は通常、PHEIICと呼ばれますが、WHOが公衆衛生上に重大な危機であると認定したときに宣言されるもので、記憶に新しいところでは2014年エボラ熱の流行でも宣言されました。その他、野生型ポリオ(2014)、新型インフルエンザ(2009)でも宣言が出されています。
これが出されると、世界中の保健当局に対して予防、監視、制御、対策の後押しとなり、(ジカ熱ではこれはまずありませんが)疾患によっては出入国制限の勧告が出来たりします。たとえば、ヤンゴン空港のエスカレーターを降りたところに「サーモグラフィーをのぞき込むロンジー姿のおっちゃん達」がいるのは、決して「ミンガラバー!」と笑顔を振りまくためではなくて、2014年のPHEICを受けたのが最初のきっかけで、結構新しい話です。
さて、話は戻ってミャンマー生活とのかかわり。
いま、ジカ熱の流行国の地図を見るとミャンマーの国土に色はついていませんが、隣国タイにはしっかりと感染者の存在を示す紫色がついています。ミャンマーとタイとの間の交通量の多さ、ミャンマーにはジカ熱の媒介蚊が豊富にいることを考えれば、そして中南米での国境を越える拡がり方の素早さを考えれば、ミャンマー国内でジカ熱の発生を見るのは時間の問題というのは誰が見ても明らかなところです。
一方でジカ熱の最大の問題は妊婦の感染で先天性異常(小頭症)の発生率が、ブラジルの数字で20倍に激増するという点にあります。妊婦さんがかかってはいけないのです。
1.妊娠可能年齢の皆さんは、(いまは感染例が報告されていませんが)近い将来、ミャンマーでジカ熱感染が発生するという前提で考えてください。もしこれまでのミャンマー生活で蚊にさされることがあったなら、妊娠初期だけでも、日本への帰省、あるいは、蚊のいない欧州等で過ごすことも考えると良いかもしれません。今ホットスポットのブラジルでは、富裕層の妊婦は次々とブラジルを出国して欧州で妊娠初期を送るという選択をとっています。エルサルバドルでは、政府が国民に対して「2018年まで妊娠するな(延期せよ)!」というおふれを出しています。
2.男性の皆さん、妊娠可能年齢ではない皆さん、ヒトゴトではありません。感染した皆さんを刺した蚊が、別の妊婦さん(日本人だろうがミャンマー人だろうが)を刺しにゆけば感染可能性ということになります。もしジカ熱らしき症状、発熱・発疹・結膜炎・関節痛、つまり、ノドも痛くなくカゼでもなさそうなのに熱が出たりしたら絶対に蚊に刺されないよう細心の注意を払ってください。あなたの勤務先に若いミャンマー人が働いてるなら、それはあなたの社会的責任でもあります。
3.ヤンゴン中心部でも蚊のわく(ボウフラがわく)スポットは豊富にあります。
特に工事現場には注意してください。シンガポールでも、邦人のデング熱感染者を調べてみたら居住地の近くに工事現場のある人が多かったというのは渡航医学会で発表されていた話です。たとえば、さくらタワーとルビーマートの間の陸橋横の工事現場は、いまは建物の形ができていますが2014年夏はこういう状況でした。他の工事現場も同様の状況です。
問題は、工事現場は水がたまりやすいだけでなく、外から見えないということです。
また、ヤンゴン市内においても、民家には水のたまる場所が多くあります。渋滞道路からはなかなか見えませんが、たとえば下記の写真は、環状線の駅周辺、緯度的にはインヤーレイクより中心寄り、セドナホテルあたりの光景です。
したがって、世界に冠たる”罰金制度”で水たまりをふさげるシンガポールあたりとは異なり、ヤンゴンでは個人防衛が中心になろうかと思います。
虫よけスプレー(成分表を確かめてDEETと書いてあるもの)
長袖長ズボン
蚊帳
蚊取り線香
を利用してください。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/02/dl/s0205-9l.pdf
WHO | IHR Procedures concerning public health emergencies of international concern (PHEIC)