ミャンマーでワクチンに由来するポリオウイルスによる発症者が2例、WHOから発表され世界レベルの話題になっています。ミャンマー保健当局からWHOに報告されたのはこれまでのところ2例。さらに加えて別の3例が検査中です。
今年10月には16カ月児が、また、先立って4月には28カ月児がそれぞれ、ワクチン由来のポリオウイルス罹患。いずれも急性弛緩性麻痺(AFP)の典型的症状です。場所はいずれもラカイン州の同じ村。
この事態を受けて、15町村の5歳以下36万人を対象に3価経口ポリオワクチンの緊急投与が12月5〜7日にかけて行われました。さらに3つの大規模ワクチンキャンペーンを同じくラカイン州で計画。
問題のウイルスはワクチン由来2型ポリオウイルス(cVDPV2)。こういう事が起こっている背景に、ポリオの生ワクチンがあります。ワクチンには生ワクチンと不活化ワクチンがあり、前者は、毒性を弱めた病原体(この場合ポリオウイルス)が成分になっています。したがってマレに、ワクチン成分の弱毒化したワクチンに感染してしまうということが起こります。過去日本でも発生し社会問題になったことがあり、現在の日本ではポリオワクチンには不活化ワクチンが使われるようになっており(実は日本では欧米先進国に一歩遅れてそうなったのですが、そこらへんの事情は長い話になるので別の機会に)、このような事態は発生しないことになっています。ミャンマーでは依然として経口ワクチンが用いられているのが問題の根っこのひとつ。ただ、今回の件が世界的話題になっているのは、「ワクチンにより罹った」という話ではなく、そのウイルスがワクチンを離れて環境中に存在(⇐平たくいえばラカイン州のどこかに棲息)していて、ワクチン接種を受けていない無関係な子供が感染して発症してしまったことが問題になっています。さらに、4月に見つかったケースと10月に見つかったケースでウイルスの遺伝子分析をしたら微妙に変異していた=ウイルスは環境中に存在していたことが濃厚ということでWHOを巻き込み世界中で報じられる騒動になっています。
対策は予定されており、来年4月から経口ポリオワクチンの種類を変更し、さらに今年12月から不活化ポリオワクチンの導入開始がおこなわれています。
対策が速やかに軌道に乗ることを願っています。
なお、この問題が、ヤンゴンやネピトーやダウェーのみの滞在にとどまるビジネスパーソンの皆さまの身に直接ふりかかる可能性は低いと思われます。
【追記】
生ワクチンが使われているのは、結核(BCG)、黄熱病、そしてポリオの一部です。その他のワクチン、たとえばインフルエンザワクチンは不活化ワクチンですから、このような事態が発生することはありません。日本はインフルエンザのシーズン、ワクチン接種をお忘れなく!