ミャンマーよもやま情報局

関西福祉大学 勝田吉彰研究室。科研費研究でミャンマーに通っています。学会発表や論文には入らないやわらかいネタをこちらで発信しています。取材や照会など連絡先はこちらへ myanmar@zaz.att.ne.jp

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保健スポーツ大臣の国会答弁でメンタル医療体制の不足と希望が明らかに

ミャンマー精神科医療体制。国会質疑で保健スポーツ大臣(Dr. Myint Htwe氏)の答弁から。下院での答弁です。あらためて人材不足が明らかに。

  • 質問者はTaungdwingyi Township lawmaker U Min Theinで、地方レベルの病院に精神科医を増やす気があるかと質したものに対する答弁。
  • 我が国(ミャンマー)いはうつ病の症例が多数存在する。おそらく最近になってのトレンドだと思う。あるいは以前からあったけれど最近我々が認識するようになったということかもしれない。
  • 保健スポーツ省が2016年10月にヤンゴン郊外のタウンシップで調査したところ、人口1000人あたり9人がうつ病、さらに9人が精神病(統合失調症をさすと思われる)。
  • 2017年にはヤンゴン郊外の他のタウンシップ2か所で調査、1000人あたり90人以上がなんらかのメンタル不調が見られた。タウンシップの名前は倫理的配慮からふせられた。

  • 精神科医の数は非常に限られているので、そのすべてが医療的ケアを受けられているわけではない。米国とは異なり、人々は精神障害に十分な注意を向けていない。タイでさえ、メンタルヘルス関連部署があり責任者が指定されている。
  • うつ病や他のメンタル疾患のは、しばしば自殺や心中のような罪をおかしている。(people suffering from depression and mental disorders often commit suicide or crimes including homicide)
  • うつ病の唯一の有効な治療は、専門家の診療を受けることだが、人々の知識は非常に限られており、精神科医の数は少ない。だから適切な治療を受けることは困難だ。
  • うつ病は、あらゆる年齢層、あらゆる階層にみられるとし、最近、バゴー管区での6年生の縊首の例をあげた。
  • また、精神障碍者を支援する社会機関がほとんどないことも指摘。
  • さらに募集を積極的に、精神科医を増やすよう努めると答弁。しかしながら、現状では精神科医が配置されている国立病院は51か所しかないとも(精神科病院2か所、中央レベル教育病院9か所、500床級病院9か所、200床級病院9か所、薬物依存症リハビリ病院2か所)
  • 本来の定員からすれば、上級精神科医(教授・専門医・准専門医)が133名必要なはずであるが、実際には59名しかいない。さらに、大学教員職の精神科医が111名定員なのに対しわずか23名しかいない。
  • 今後数年かけて増やしたい。この12月に専門医過程をおえた精神科医が24名おり、病院からリクルートされている。

この国のメンタル医療体制、精神科医の質は高く(問題なく、共通の常識で話が通じる)国中に2か所しかない精神科病院ではハイレベルな治療がおこなわれていながら、それを享受できる患者がほんのわずかであるというのが、毎度実感する問題点です。

しかしながら、メンタルヘルスに対する社会的関心が盛り上がりつつあるのは、希望の持てるサインです。

また、答弁に立っている保健スポーツ大臣は昨年、学会の懇親会で同じテーブルになりお話させていただきました。現状を正確に認識、何が必要なのか「わかってる人」だというのが実感で、期待しております。

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